「便秘」との向き合い方
妊娠中の妊婦さんにとって、不安になるものの一つが便秘ではないでしょうか。一言に便秘と言っても、症状や時期は人それぞれ。便秘で辛い思いをしたという妊婦さんがいる一方、そうでない妊婦さんもいらっしゃいます。また、腸内環境の悪化は精神的な不安感を引き起こすことも・・。
この記事では、妊娠による便秘の原因や症状を正しく理解し、つらい便秘を和らげる方法についてご紹介します。
1. 便秘の原因と解決策
①ホルモンバランスの変化
妊娠中はむくみや吐き気、だるさ、頭痛、肩こり、手足のしびれ、腹痛、頻尿など、実にさまざまな不調が現れるもの。
便秘もそのひとつで、妊娠すると妊娠に関わる女性ホルモンが盛んになり胎盤の形成や胎児の成長などを促します。その一方で、腸の壁をむくませたり、ぜん動を抑えたりする作用もあるため、便秘を引き起こすのです。
▶️対策:女性ホルモンのバランスを整えるために以下のような点に気をつけましょう。
1、栄養バランスのよい食事をとる
2、無理なダイエットをしない
3、適度な運動を行う(疲れすぎない程度、3回/週以上が目安)
4、規則正しい生活を送る(できれば朝起きたら朝日を浴びる)
5、しっかり睡眠をとる(7時間以上がおすすめ、夜12時までには就寝する)
②食事量の減少
食事の量が少ないと、大腸へ送られるカサの量も少なくなり、便の量も少なくなります。 また、大腸への刺激が減り、蠕動運動も弱くなります。 そのため、内容物が直腸に送られにくくなるのです。妊娠による体重増加を気にした朝食抜きや無理なダイエットも便秘の原因になり得ます。
▶️対策:栄養バランスの整った食生活
便秘の解消や予防には、腸内環境を良くする食べ物を積極的に摂取することが大切です。
腸内には人に悪い影響を与える「悪玉菌」、腸内環境の良しあしによって、どちらにもなりうる「日和見菌」、人に良い影響を与える「善玉菌」の3種類の細菌が存在します。
腸内の悪玉菌が増加すると、便秘や下痢、体臭が悪化する他、肌トラブル、アレルギー、生活習慣病やガンなど、多くの不調の原因にもなります。また、腸は私たちの身体を病原菌やウイルスから守ってくれる免疫システムを備えているので、腸内環境の悪化は免疫の低下にもつながります。
腸内環境の改善には善玉菌を増やしていくことが重要ですが、ここでプロバイオティクスとプレバイオティクスがカギになります。
~プロバイオティクスとプレバイオティクス~
似たような名前ですが、この二つは全く別物で異なる働きで善玉菌を増やします。
〇プロバイオティクスとは
善玉菌を持っている生きた微生物や食品のことです。
腸内環境を改善する、免疫力を回復させる、腸内の感染を予防する等の働きがあり、中でも善玉菌の一つであるビフィズス菌は有名です。
食べ物からとった善玉菌は、自ら増殖するものではないので、効果を期待するには持続的に摂取する必要があります。
ヨーグルト・乳酸菌飲料(乳酸菌やビフィズス菌)・チーズ・納豆・ぬか漬け・味噌・甘酒・キムチ、青汁から手軽にとることができます。
〇プレバイオティクスとは
腸内にいる善玉菌にエサを与え、増殖を促す食品のことです。
オリゴ糖や食物繊維などが例に挙げられます。プロバイオティクスである乳酸菌・ビフィズス菌の増殖促進、整腸作用、ミネラル吸収促進などの働きがあります。
オリゴ糖は大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品に多く含まれています。
このプロバイオティクスとプレバイオティクスの両方を継続的にとることにより、善玉菌を効率よく増やすことができます。
最近では、ツバメの巣が天然のプレバイオティクスとして機能できることが明らかになってきました。プロバイオティクスであるビフィズス菌の入ったヨーグルトとプレバイオティクスとして機能するツバメの巣を同時に摂取することはより効果的といえます。
③水分摂取量の減少
水分の摂取量が少ないと、便が硬くなり、スムーズに移動できないので、便秘になりやすくなります。
▶️対策:十分な水分摂取
水分を十分にとることで便がやわらかくなり、排便がスムーズになり便秘が改善する場合があります。また、水分は食物繊維に吸収される性質をもっていて、便のカサを増す役割もあります。
1日の水分摂取量の目安は、冬1ℓ、夏1.5ℓ以上といわれています。
便秘が気になる方は普段から意識的に水分を摂取するようにしましょう。
④運動不足
おなかが大きく動きにくいこの時期は運動不足になりがちです。これによって、大腸の活動が低下することも便秘の原因の1つ。また、排便時はお腹に力を入れるため、腹筋が大きく関わっています。 運動不足で腹筋が衰えると、便を押し出す力が弱くなるので便秘の原因にもつながります。
▶️対策:適度な運動を取り入れる
逆に身体を動かすことで、腸も伸縮したり揺さぶられたり刺激を受けて、便を先へと送り出すぜん動運動の活性化につながります。
しかし、当然ながら過度な運動はNG。無理のない範囲で軽いウォーキングやジョギング、ヨガやピラティスなどをしてみましょう。
①〜④の解決策は妊娠中でなくても、腸内環境を改善させる健康習慣です。
妊娠を機にこれらを意識的に取り入れ、快適な毎日を送りましょう。
実は腸内環境と心は深い関係があります。
感情(性格)を支配する代表的な脳内神経伝達物質はドーパミン(快感ホルモン)、ノルアドレナリン(ストレスホルモン)、セロトニン(幸せホルモン)です。実はその多くが腸で作られます。特にドーパミンやノルアドレナリンの暴走をも抑えるセロトニン(幸せホルモン)の90%は腸に存在します。うつ病の人は脳内のセロトニンが少ないといわれており、まさに「腸」を整えれば「心」が整うのです。
また、腸管の蠕動運動に関与し、多ければ下痢をきたし、少なければ便秘になります。
腸管は粘膜に覆われていて、その粘膜を覆っている粘液の主成分はムチンと呼ばれるタンパク質です。ムチンは胃や腸を外界からの刺激や細菌感染から守る役割をしています。ツバメの巣にはそのムチンが豊富に含まれています。
監修:産婦人科医 宗田聡先生
筑波大学卒業後、同大学へ産婦人科医師として勤務。その後、海外の大学への派遣や、周産期センター長を経て、現在は医療法人HiROO理事長・広尾レディース~恵比寿本院~の院長を務める。「誰にでもいいお産を味わってもらいたい」という思いで、妊婦さんや出産をはじめ女性医療と真摯に向き合っている。