肌にも免疫機能がある?免疫力と肌荒れの関係を理解しよう

免疫機能とは、細菌やウイルスなどの異物から体を守る機能のこと。
体内には様々な免疫細胞が存在し、それぞれが各々の役割を果たすことで免疫機能を維持しています。
免疫力が低下すると風邪などの感染症にかかりやすくなることはよく知られていますが、実は肌荒れが免疫機能と関係していることも。
そこで今回は、肌荒れと免疫の関係について詳しく解説します。
肌の免疫機能について
肌にも免疫機能があり、病原菌をはじめとする異物の排除、老廃物や古くなった細胞の除去、ダメージを受けた肌の修復、ターンオーバー促進など、様々な役割を担っています。
そのため、肌の免疫力が低下したり免疫機能に異常が生じたりすると、肌荒れなどのトラブルにつながる恐れがあるのです。
そして、肌における免疫力を担う重要な存在が、表皮(皮膚の外側)に存在するランゲルハンス細胞。
ランゲルハンス細胞には以下のような働きがあります。
・皮膚に入ってきた異物を認識する
・他の免疫細胞に情報伝達をする
・異物を捕まえて排除する
・肌荒れなどのトラブルの原因を鎮め、肌荒れを予防する
ランゲルハンス細胞の形状と働き方
ランゲルハンス細胞は免疫細胞の一種で、形状としては樹状細胞の一種です。
樹状細胞とは、樹木(木の枝)のような突起を持つ細胞のこと。
表皮の細胞の数パーセントはランゲルハンス細胞であり、突起を表皮に張り巡らせて網目状に存在し、病原菌などの異物が侵入していないかどうかを常に見張っています。
異物を認識するとランゲルハンス細胞が活性化し、細胞がリンパ節に遊走(移動)。
リンパ節にはほかの免疫細胞も集まっており、ランゲルハンス細胞によって他の免疫細胞が活性化されることで、皮膚の健康が維持されているのです。
肌荒れの症状と免疫の関係性
免疫機能の低下や異常によってどのような肌トラブルが起きるのでしょうか?
ここからは、免疫機能と関わりのある肌荒れや病気について見ていきましょう。
湿疹などのアレルギー症状
湿疹の原因は乾燥、何らかの刺激、汗など様々ですが、アレルギー反応も原因の一つとして挙げられます。
たとえば、金属やゴム、洗剤などの成分、植物などへのアレルギー反応として湿疹が生じることがあるのです。
そして、アレルギーが起こるのは免疫機能の誤作動(過剰反応)が理由。
なかでも、免疫細胞の一つであるヘルパーT細胞が関係しているとされています。
通常は体内に異物が入り込むと、マクロファージという免疫細胞が異物を排除し、ヘルパーT細胞に排除したことを伝えます。
しかし、なんらかの誤作動でマクロファージからの情報が間違って伝達されると、ヘルパーT細胞が抗体をつくる指示を出してしまいます。
抗体ができると、次に同じ異物が体内に入り込んだときにヒスタミンなどの化学物質が放出されてしまい、この量が過剰だと湿疹などの症状が現れることがあるのです。
帯状疱疹
帯状疱疹とは、水ぼうそうの原因となる「水痘帯状疱疹ウイルス」によって、痛みを伴う発疹や水ぶくれなどが帯状に生じる病気です。
水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、まずは水ぼうそうを発症。
そして、水ぼうそうが治った後もウイルスは体の中に潜伏し、免疫力が下がるとウイルスが再活性化して帯状疱疹にいたるのです。
免疫力が下がる背景としては、加齢をはじめ、疲労、ストレスなどが挙げられます。
自己免疫疾患による皮膚症状
自己免疫疾患とは、免疫機能が体の一部を異物だと間違って認識してしまい、攻撃することで様々な症状が生じる病気です。
自己免疫疾患には様々なものがありますが、湿疹などの皮膚症状が出る病気には以下のようなものがあります。
・全身性エリテマトーデス:発熱や倦怠感の他、両頬にできる蝶のような形の赤い発疹、周囲がかさかさした円板状の発疹などが生じる病気。皮膚症状のみが現れる場合は「皮膚エリテマトーデス」という。患者の多くが女性。
・シェーグレン症候群:主に唾液腺や涙腺が障害される自己免疫疾患。主な症状は目や口の乾燥だが、肌荒れや発疹、紫斑などが生じることもある。患者の多くが女性。
・皮膚筋炎:筋肉の炎症で力が入りにくい、疲れやすくなる、痛むといった症状が出る病気を多発性筋炎といい、中でも皮膚症状があるものを皮膚筋炎という。手指やひじ、ひざの関節の外側にがさがさした赤い斑や、上まぶたにはれぼったい赤い斑などが生じる。男性よりも女性患者が多い。
肌荒れを予防・改善する方法5選
ランゲルハンス細胞による肌の免疫力は、加齢とともに低下すると言われていますが、免疫力を整えることで、肌の免疫力アップも期待できるかもしれません。
ここからは、免疫力を整える5つの方法をご紹介します。
栄養バランスのよい食事をとる
タンパク質は細胞のもとになる、ビタミンB2は細胞を活性化する、ビタミンCは白血球の働きを高めるなど、多くの栄養素が免疫機能に関わっています。
そのため様々な栄養素をバランスよくとることが大事。
その中でも積極的に摂りたい栄養素や食べ物は以下の通りです。
発酵食品
免疫細胞の多くが腸に存在するため、免疫力を整えるためには腸内環境を整えることが大事です。
良好な腸内環境をつくるためのポイントが、乳酸菌などの善玉菌を増やすこと。
善玉菌は発酵食品に豊富に含まれているため、漬物、ヨーグルト、納豆などを積極的に取り入れるのがおすすめです。
食物繊維
腸内環境をよくするためには、乳酸、酪酸などの短鎖脂肪酸も大事。
短鎖脂肪酸を増やすためには善玉菌のはたらきが必要であり、そのためには善玉菌のエサとなる食物繊維が必要となります。
食物繊維が多く含まれるのは、穀類(とくに玄米など)、野菜、豆類、芋類、海藻類など。
また、食物繊維で便通がよくなり、細胞の新陳代謝が高まることも、肌荒れ改善につながる可能性があります。
ツバメの巣
細胞同士の情報伝達など、体内で重要なはたらきをするものとして最近注目が高まっている「シアル酸」。
免疫機能にも関わっており、年齢とともにシアル酸が減ることが免疫力低下の原因の一つだと言われています。
シアル酸を豊富に含む食べ物はほとんどないため、通常の食事で摂取するのは難しいのですが、実は、中華料理の高級食材として知られているツバメの巣にはシアル酸が豊富。
そして、ツバメの巣には様々な健康・美容効果があることも分かっており、例えば肌のダメージ修復、バリア機能向上、弾力アップ、保湿効果、美白効果などが期待できます。
肌の免疫力を整えるとともに、肌への様々な効果によって、肌荒れ予防・改善につながるでしょう。
LPS
LPSはグラム陰性細菌に分類される細菌の細胞壁に存在する物質であり、日本語では「糖脂質」とも呼ばれます。
LPSが免疫細胞のマクロファージを活性化することで、免疫力が向上。
さらに、肌内部のケラチノサイトを活性化することで、保湿成分の生成やバリア機能向上にもつながり、肌荒れ予防・改善効果が期待できると言えます。
なお、LPSは土の中などに存在するため、農薬などをあまり使わず、自然のままに栽培された野菜のほか、海藻などに多く含まれるとされています。
体を温める
体温がある程度高いほうが免疫細胞は活性化されます。
とくにお腹や手首、足首を温めるとよいとされているため、お風呂にゆっくりつかったり、カイロや腹巻などを使ったりするのがおすすめです。
適度に運動をする
適度な運動は免疫によいとされています。
ただし、過度な運動は逆に免疫力低下につながるため注意しましょう。
軽いランニングなど、無理なく適度な運動を習慣づけることをおすすめします。
ストレスを溜めない
強いストレスが続くと、自律神経の乱れによってIgAという免疫物質の分泌が減り、免疫機能低下につながるとされています。
ストレスを溜めないことは難しいので、ストレスや疲れを感じたらゆっくり休んだり、リフレッシュしたりするのがおすすめ。
また、笑うことも免疫力アップにはよいとされています。
お笑い番組を見たり、面白い話を考えて口に出したりと、笑顔になれるような行動を積極的に行ってみましょう。
質の高い睡眠をとる
免疫力のためには適度な時間かつ質の高い睡眠も重要。
ある研究では、睡眠時間が短すぎても長すぎても免疫物質のIgAの分泌量が減ることがわかり、免疫機能をはじめとする健康のためには、睡眠時間は6~8時間程度が適切という結論が出ています。(※)
また、以下のようなポイントを押さえて体内時計のリズムや睡眠環境を整え、質の高い睡眠がとれるようにしましょう。
・起きたら日光を浴びて体内時計をリセットする
・白湯で体を温め、朝食をとって体の中から目覚めさせる
・適度な運動を行う
・寝る前のスマホ、パソコン、飲酒、喫煙、カフェインを控える
・運動や入浴で体温を上げる
・寝室は快適な室温、湿度、明るさにする
・快適な寝具を揃える
※…岡村尚昌ら (2010). 睡眠時間は主観的健康観及び精神神経免疫学的反応と関連する
免疫力を高めて肌荒れを防ごう!
免疫機能は細菌やウイルスを排除し、感染症などから体を守るだけでなく、肌荒れなどのトラブル防止にも関係しています。
免疫機能を整えるためには、栄養バランスのよい食事、体を温める、適度な運動、ストレスを溜めない、質の高い睡眠などが大切。
日ごろの生活習慣を見直し、免疫機能を整えることで、肌荒れ予防や改善に取り組んでみてください。