上皮成長因子(EGF)とは?構造・はたらき・体への影響を解説

成長因子の一つである、上皮成長因子(EGF)。
ターンオーバーのサイクルを正常化するなど、主に肌への効果が注目されている存在です。
今回は、EGFの概要や、そのはたらき方を詳しく解説。
EGF以外の代表的な成長因子についてもご紹介します。
そもそも「成長因子」とは?
上皮成長因子(EGF)は成長因子の一つです。
成長因子 (Growth Factor;グロースファクター)は、体内で細胞の増殖から死滅までをコントロールしているたんぱく質のこと。
細胞の増殖、分化(細胞がある形態や機能を持つこと)を促進するはたらきがあり、100種類以上の成長因子があることが分かっています。
上皮成長因子(EGF)とは?
上皮成長因子(Epidermal Growth Factor; EGF)は、53個のアミノ酸から構成されるたんぱく質。
唾液や母乳などに含まれており、身近なところでは皮膚にも存在します。
上皮細胞(体や臓器の表面を覆う細胞の総称で)の増殖を促すはたらきがあり、皮膚では、皮膚の表面にある受容体にEGFが結びつき、細胞の再生などを促進。
結果として、皮膚のターンオーバーの正常化や肌質向上、シミ、くすみ、ニキビ跡の改善、肌にハリを与える、外的ダメージから肌を守るといった効果が期待できます。
化粧品に配合されることもあり、美肌効果が期待できるとして注目されている成分です。
EGFに期待できる効果について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
EGFの発見と活用
1962年、アメリカのスタンリー・コーエンという生化学者たちがEGFを発見しました。
彼らはもともと、NGF(nerve growth factor;神経成長因子)の研究をしており、その過程でヘビ毒の中にNGFが多く含まれていることを発見。
ヘビ毒は唾液腺から分泌されることから、マウスの唾液腺(顎下腺)を調べていたところ、その抽出物によって、マウスの赤ちゃんのまぶたの開きや歯の成長が早まることが分かったのです。
そして、1962年にその物質をTooth lidfactorとして報告。
翌年、上皮組織の増殖を促す効果があることがわかり、Epidermal Growth Factor(EGF)と改名されました。
なお、EGFの発見や研究結果などを理由に、スタンリー・コーエン氏らは1986年度のノーベル医学生理学賞を受賞しています。
EGFのはたらき方
EGFは様々な細胞に存在し、例えば皮膚や唾液のほか、母乳などにも含まれています。
EGFの産生や放出が行われるには、細胞表面でシェディングが行われることが必要です。
シェディングとは、細胞膜に埋め込まれたタンパク質のうち、細胞の外に露出している部分を切り離すこと。
そして、産生・放出されたEGFが細胞の表面にあるEGF受容体 (EGFRなど)に結合すると、EGFRが活性化して、細胞内に情報(細胞がいつ成長すべきかや死ぬべきかといった情報)を伝達します。
その結果、細胞の増殖、分化、成熟、細胞外マトリックス(細胞の外に存在する物質)の分解、細胞の移動などが行われるのです。
なお、細胞内に情報を伝達し終わったら、複数の酵素によって一連の流れが終了します。
EGF受容体(EGFR)のはたらき方
前述の通り、EGFが働く際には、EGF受容体(EGFR)に結合する必要があります。
では、EGF受容体はどのようにはたらくのでしょうか。
まず、EGF受容体の構造から説明すると、EGF受容体もたんぱく質でできており、大きな細胞外部分(細胞膜などのこと)や、柔軟なしっぽのような長い部分で構成されています。
細胞の外側に面した部分がEGFを認識し、EGFがそこに結合すると、しっぽのような部分にリン酸が付加。
すると、細胞内にある、信号を伝達する役割を持つたんぱく質が、しっぽのような部分に刺激されて情報伝達が行われます。
情報伝達が終わると複数の酵素がはたらき、しっぽのような部分に付加されたリン酸も切断されて、一連の流れが終了するというのが、EGFとEGF受容体がはたらくときの仕組みです。
その他の成長因子について
現在分かっている成長因子の種類は100以上。
代表的な成長因子をいくつかピックアップしてご紹介します。
KGF(ケラチン細胞増殖因子/表皮細胞増殖因子)
KGF(Keratinocyte Growth Factor;ケラチン細胞増殖因子 または 表皮細胞増殖因子)は、皮膚の表面を構成するケラチノサイト(角化細胞)の増殖を促進する成長因子です。
肌でのはたらきはEGFと同様。
さらに、発毛促進因子と呼ばれることもあり、毛のもととなる毛母細胞に作用することで、育毛効果も期待できます。
FGF(線維芽細胞増殖因子)
FGF(Fibroblast Growth Factor;線維芽細胞増殖因子)は、肌のハリや弾力、うるおいなどの効果が期待できる成長因子。
EGFが作用する表皮よりも奥の真皮に作用し、名前の通り、真皮にある繊維芽細胞を増やすはたらきがあります。
繊維芽細胞は肌のハリや弾力につながるコラーゲンやエラスチン、うるおいにつながるヒアルロン酸の生成を行う細胞です。
なお、FGFは繊維芽細胞以外にも様々な細胞に関与し、傷を治したり、血管をつくったりするほかにも、数多くの機能があるとされています。
TGF(トランスフォーミング増殖因子)
TGF(Transforming Growth Factor;トランスフォーミング増殖因子)は、コラーゲンやエラスチンの強化や、抗酸化作用が期待できる成長因子です。
傷の治りを促進する、細胞の老化を防ぐといった効果も期待できます。
HGF(肝細胞増殖因子)
HGF(Hepatocyte Growth Factor;肝細胞増殖因子)は、肝細胞の増殖や再生を促進する成長因子です。
肝炎をはじめ、肝臓に障害がある場合に血中のHGFが増えるという特徴があり、検査に用いられることも。
また、肝臓以外にも、肌の細胞の増殖を促進したり、新たな血管をつくったりすることにも関わっています。
IGF(インスリン様成長因子)
IGF(Insulin-like Growth Factors;インスリン様成長因子)は、名前の通り、構造がインスリン(糖代謝などの調節にかかわるホルモン)に似ている成長因子です。
体内では、卵子や精子の形成、体の発達や成長、代謝の調節、老化の抑制といったはたらきに関わっています。
VEGF(血管内皮細胞増殖因子)
VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor;血管内皮細胞増殖因子)は、血管を新たにつくるはたらきがある成長因子です。
血管の機能を調節する血管内皮細胞に作用してはたらきます。
近年では、殺菌作用を高める効果が期待できることも分かってきています。
一方で、腫瘍内にも血管をつくってしまい、腫瘍の増殖につながってしまう悪い一面もあります。
そのため、VEGFと結合させて腫瘍の成長を防ぐ薬も存在します。
上皮成長因子「EGF」で健康・若々しさの維持を
上皮細胞の増殖を促し、皮膚ではターンオーバーの正常化や肌質向上、シミ、くすみ、ニキビ跡の改善、肌にハリを与える、外的ダメージから肌を守るといった効果が期待できるEGF。
肌にアプローチしたい場合は、EGF配合のスキンケアを選んでみてはいかがでしょうか。
また、食べ物では、中華料理の高級食材として知られるツバメの巣などにEGFが含まれています。
最近ではツバメの巣配合のサプリメントやスキンケアアイテムも登場しているので、ツバメの巣を取り入れることも検討してみてください。