logo シアル酸の体内での機能とはーその構造や効果を詳しく解説

食品や人間の細胞などに含まれるシアル酸ですがその機能はさまざまで、私たち人間にとって驚くほど重要な役割を果たしています。この記事では、シアル酸が私たちの体内でどのように機能しているのか、具体的にどのような場面で影響を及ぼすのかなどについて、詳しく解説していきます。

シアル酸は人間の生命活動・維持機能に関与している

シアル酸は細胞同士の間における情報伝達をはじめ、体内で起こった炎症や脳の老化など、人間の生命活動や維持においてさまざまな角度から関わっていることがわかっています。実際にシアル酸がそれらのはたらきに対してどのように関与しているのかについてご説明していきます。

細胞間情報伝達などの生体制御作用に関与する糖鎖とシアル酸

参照 https://mstyle-j.co.jp/tsubame-lab/science-lab/sciencelab01

シアル酸とは細胞膜表面に存在する糖鎖を構成する一部であり、人間の体内では、赤血球、血管、神経、気道などに、分泌液であれば唾液や母乳に含まれています。ほかにも食品であれば、牛乳や鶏卵、ツバメの巣などにシアル酸が含まれています。なお、糖鎖というのは、その名の通り糖が複数連鎖したもので、タンパク質と結合して細胞表面に存在しています。糖鎖は、免疫反応の活性化、免疫の過剰反応の予防、タンパク質の保護など重要な役割を持ちます。

そして、この糖鎖を形成するシアル酸は、体内の細胞同士のコミュニケーションにおいて鍵となる役割を果たします。シアル酸は細胞膜の糖鎖の端に位置することで、細胞膜が負の電荷を帯びるようになります。これにより陽イオンと結合したり、陰イオンと反発したりすることで、細胞同士の情報伝達機能を担っていると考えられています。

また動物実験では、シアル酸を作り出すための酵素が不足してしまうと生命維持が困難になることも判明しており、シアル酸が生命を維持する上でも欠かせないものであることが示されています。

炎症や脳などの老化にも深く関与している

シアル酸は、体内で炎症などの問題が起こると糖鎖から遊離する性質があります。この性質により、シアル酸は炎症の程度を予想するための炎症のマーカーとしても認識されています

ほかにも、古くなった赤血球内のシアル酸の含有率は徐々に低下していくことからも、シアル酸がいかに脳や他の器官などの老化において重要なのかがうかがえます。

さらに、IgG(免疫グロブリンG)*が含むシアル酸量が減少してしまうと、関節リウマチの症状の悪化につながる可能性や、インフルエンザウイルスへの感染とシアル酸との関連性も示されています。これらにより、体内の炎症や、脳や他器官などの老化、その他症状にもシアル酸が密接に関係していることがわかります。

*IgG(免疫グロブリンG):異物が体内に入った時に排除するように働く抗体の機能を持つタンパク質で、IgGは血液中に最も多く含まれる。

シアル酸の体内での機能・効果

シアル酸の体内での機能・効果は非常に多様で、人間が健康的な生活を営む上で欠かせない重要な機能が多いと言われています。どのような効果があるのか、今回は5つの項目についてそれぞれご紹介していきます。

学習能力の向上

シアル酸は脳の一部である糖脂質などに含まれており、脳の発達に重要とされている初乳(産後1週間以内に出る母乳)に特にたくさん含まれていることから、脳の形成や発達に重要な役割を果たすと考えられてきました。

また、シアル酸と同様に、脳をつくる際に必要な要素であるDHAという成分が不足すると、異常な行動や学習能力の低下が見られることがわかっています。実際に動物実験では、DHAが欠乏している動物にシアル酸を投与することで学習能力が向上することがわかっており、このことからも、シアル酸は脳の発達や学習能力の面で大切な役割を果たしていると考えられています。

炎症や酸化ストレスの改善

シアル酸の摂取によって、高脂質・高カロリーな食事によって誘引される炎症や酸化ストレスのリスクを軽減させるとも示唆されています。具体的には、シアル酸を摂取すると、血液中の炎症の程度を測る指標や、抗酸化の程度を測る指標が改善されるという結果が出ています。

また、血液中の中性脂肪値の低下や、血糖値を一定に保つ働きを持つインスリンの抵抗性の改善、さらには、肝臓の機能を示す指標も改善される傾向が見られています。これにより、シアル酸には肝臓の保護や再生を促進するはたらきもあること考えられます。

免疫力の向上

シアル酸は免疫力の向上にも期待ができます。感染症であるインフルエンザやロタウイルスへの感染阻害に効果があるといわれており、実際に抗インフルエンザ薬のタミフルは、シアル酸の構造をもとにして設計されています。

また、実際にシアル酸を摂取することで、インフルエンザへの感染細胞の割合が減少し、ロタウイルス感染後の主要症状の一つである下痢の発症を抑制するなどの結果が実験から得られています。

口腔の乾燥を防ぐ

シアル酸は口腔の乾燥を防ぐ点でも効果があるといわれています。たとえば、加齢により唾液の分泌量が減少している動物に対し、シアル酸を摂取できるような食事を与えると唾液の量が改善されたという研究結果もあります。シアル酸の摂取によって唾液の量が改善された理由としては、シアル酸を再度摂取することで糖脂質が生成され、唾液の分泌を促進したためと考えられています。

なお、口腔の乾燥はただ単に口の中が乾燥するだけでなく、舌の痛み、味覚の異常、食事の摂取が難しくなる、嚥下が困難になるなど生活の質を大きく低下させることがあります。

動脈硬化の予防

シアル酸によって、酸化ストレスの減少および、コレステロール値を低下させることにより、動脈硬化を軽減・予防できる可能性も示されています。

動脈硬化の要因として挙げられるのが酸化ストレス、コレステロールの増加です。酸化ストレスとは、酸化によって体内の細胞が傷つけられることで、酸化ストレスが蓄積することで動脈硬化をはじめとする様々な病気に繋がる可能性があります。シアル酸がこの酸化ストレスを軽減することで、動脈硬化の進行を抑制する可能性があるといわれています。

また、シアル酸は肝臓に蓄積された脂質を減少させ、さらに血中の脂質値も改善されたことで総コレステロール値が下がったという研究結果もあります。これによりシアル酸が脂質の代謝を改善する可能性があることも考えられます。

シアル酸は人間の生命活動・維持機能に関与する重要な成分

シアル酸は、生体制御作用に関わる抗炎症・老化、酸化ストレスの改善、免疫力向上、ドライマウスの改善、動脈硬化の予防などに大きく関係していると考えられています。シアル酸が持つ多くの機能は、人間の生命活動や健康の維持において重要な機能であるといえます。

なお、シアル酸を多く含むと言われているのが、ツバメの巣です。ツバメの巣エキスを含む健康食品も登場しています。人間が生命を健康に維持していく上で重要なはたらきを持つシアル酸の機能を今一度見直し、日常で取り入れてみてはいかがでしょうか。

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