産後の子宮の状態はどうなっている?痛みや症状など産後の過ごし方を解説
出産を終えると子宮が収縮し始めますが、それにともないさまざまな症状が現れることがあります。できるだけ快適に過ごすには、どのような症状が起こる可能性があって、どう対処したらよいのかを知っておくことが大切です。
そこで今回は、産後の子宮の変化や、産後の子宮に起こる症状と対処法などについて解説します。
産後の子宮の変化
まずは、産後の子宮がどのように変わっていくのかをみていきましょう。
【出産直後】子宮収縮が始まる
子宮の大きさは通常7×3~4cm程度ですが、妊娠すると赤ちゃんの成長に応じて大きくなっていき、妊娠後期には36~40×24cmほどの大きさになります。
そして出産を終えるとすぐに子宮が収縮し始めますが、いきなり元の大きさに戻るわけではありません。4週間ほどかけて、少しずつ元の大きさに近づいていきます。また、産後数日程度は子宮収縮による痛み(後陣痛)が生じることもあります。
【産後6〜8週間前後】子宮が元の大きさに戻る
産後6~8週間ほど経つと、子宮がほぼ妊娠前の大きさに戻ります。出産直後からここまでの期間を「産褥期(さんじょくき)」といい、この時期に無理をすると体の回復が遅れる恐れがあるため注意が必要です。
【産後4〜5ヶ月前後】時期に個人差はあるものの生理が再開する
出産から4~5ヶ月ほど経つと生理が再開します。母乳育児の場合は、授乳の際に排卵を抑える作用があるホルモンが分泌されるため、生理再開までに6ヶ月くらいかかる場合もあります。
上記の期間はあくまでも目安であり、生理が再開するまでの期間には個人差があるため気にしすぎる必要はありません。ただし、産後6ヶ月以上経っても生理が再開しない場合は、医療機関を受診しましょう。
産後の子宮の変化によって起こる症状
産後の子宮の変化によって、 ママの体にさまざまな症状が現れることがあります。どのような症状が出る可能性があるのか、くわしくみていきましょう。
子宮復古による痛み(後陣痛)
産後に子宮が元の状態に戻っていくことを子宮復古(しきゅうふっこ)といいますが、 このとき下腹部に痛みを感じる場合があります。
この痛みは後陣痛と呼ばれるものです。後陣痛の強さは人によって大きく異なり、出産時くらい強い痛みを感じる方もいれば、生理痛程度の痛みを感じる方もいます。
悪露(おろ)
悪露とは、出産時に剥がれ落ちた胎盤や子宮内膜、傷から出た血液や分泌物などが体外に排出されるものです。出産から3~4日前後は色が赤く量も多いですが、徐々に茶褐色に変化していき、産後3~4週間ほどで白っぽいおりものになることが一般的です。
産後3~4週間ほど経っても悪露が治まらなかったり悪臭がしたりする場合は、何らかの問題が起きている恐れがあるため、医師に相談しましょう。
授乳による子宮収縮
赤ちゃんに授乳するとオキシトシンというホルモンが分泌されますが、オキシトシンには子宮を収縮させる働きがあります。そのため母乳育児の場合は、授乳時に下腹部に痛みを感じることがあります。
会陰切開・帝王切開による痛み
出産時に陰部が裂けたり、会陰切開したりしたことによる痛みが続くことがあります。また、帝王切開での出産の場合、お腹の表面から子宮までを切るため産後に傷口が痛みます。そこに後陣痛も加わるため、帝王切開での出産後は下腹部に違和感や痛みを覚えることが多いでしょう。
産後の症状に対する対処法
産後は子宮の変化によって、ママの体にさまざまな症状が現れます。できるだけ 快適に過ごすためにも、産後の症状への対処法を知っておきましょう。
無理せず安静にする
産後の体にはダメージが蓄積しているので、とにかく無理せず安静に過ごして体を回復させることが大切です。無理をすると回復が遅れてしまうので、とくに産後6~8週間ごろまでは、できる限り体を休めましょう。
デリケートゾーンを清潔に保つ
産後は悪露などによってデリケートゾーンが汚れがちです。デリケートゾーンが汚れたまま放置すると、会陰切開の傷が治りにくくなったり細菌感染を起こしたりする恐れがあります。トイレに行ったら清浄綿で汚れを拭き取る、入浴時にきちんと洗浄するなどして清潔に保ちましょう。
お腹や腰を温める
産後に体が冷えると、後陣痛や腰痛が悪化することがあります。腹巻やホッカイロなどでお腹や腰を温めるなど、体が冷えないように対策しましょう。産後の1ヶ月健診で医師の許可が出た場合は、湯船に浸かって体を温めるのもおすすめです。
気分転換をする
産後は睡眠不足や痛みが続き、ストレスが溜まりやすい状態です。過度にストレスが溜まると母乳が出にくくなったり、 産後うつになったりする恐れがあります。
赤ちゃんのお世話をしながらだと難しいかもしれませんが、できるだけ自分の時間を作ったりしっかり睡眠を取ったりして、気分転換するようにしましょう。
産褥体操で体の回復を促す
産褥体操を行うと体が回復しやすくなるほか、産後太りの防止にも役立ちます。産褥体操とは、腹式呼吸や足首回しといった産後の体でもできる負荷の軽い運動です。どの程度体が動かせるかは人によって異なるので、医師に確認を取ったうえで行いましょう。
水分補給と栄養のある食事
体を回復させるには、たっぷり栄養を取る必要があります。たんぱく質やカルシウム、葉酸、ビタミンなどの栄養素を中心に、栄養バランスのよい食事を取るよう心がけましょう。
また、産後の体は授乳などによって水分が不足しやすい状態です。水分不足になると便秘になりやすいので、水分もしっかり摂取しましょう。
産後の子宮に関する注意点
産後の子宮はとてもデリケートで、しっかり回復に努めないと下記のようなトラブルが起こる可能性があります。
- 子宮復古不全
- 子宮内感染症
- 子宮脱
- 不正出血 など
それぞれの詳細についてみていきましょう。
子宮復古不全
子宮復古不全とは、妊娠中に大きくなった子宮が出産を終えても元の大きさに戻らないことです。胎盤が子宮内に残っていたり、子宮内感染症になっていたりすることが原因で起こります。
子宮復古不全が起こると、血性悪露(血が混じった悪露)や子宮出血などの症状が現れます。子宮収縮剤や抗生物質を用いた治療が必要になることが多いため、産後に長く出血が続く、腹痛や悪臭がするなどの症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
子宮内感染症
子宮内感染症は、出産時の傷から細菌が侵入したことが原因で起こる病気です。子宮内感染症を発症すると、発熱・下腹部痛・腰痛・悪臭などの症状が現れます。治療には抗菌薬が用いられることが多いため、何らかの症状が現れた場合は早めに医療機関を受診しましょう。
産褥熱
膣や子宮に細菌感染が起こることによる発熱を、産褥熱といいます。一般的に、出産翌日(24時間後)~10日以内に、38度を超える高熱が2日以上続いた場合に産褥熱と診断されます。
帝王切開による出産や、早期破水で分娩に時間がかかったときなどに発症しやすいといわれていますが、感染経路が断定できないケースも多々あります。
子宮脱
子宮脱とは、子宮が膣の外に出てしまう病気です。50~60代に起こることが多いですが、まれに出産直後に起こることもあります。
子宮脱が起こる原因は、出産や加齢、肥満などによって骨盤底筋(骨盤の底で内蔵を支えている筋肉)がゆるんだり損傷したりすることです。とくに出産は骨盤底筋にダメージを与えるため、子宮脱になる大きな要因になるといわれています。
子宮脱の主な症状は、子宮が下がってくる違和感や痛み、尿失禁などです。子宮の一部または全部が膣外に出ている場合、器具の挿入や手術などによる治療が行われるため、子宮脱と思われる症状が現れた場合は医師に相談しましょう。
不正出血
産後の不正出血とは、出産から1ヶ月以上経っても生理のときのような出血が続く状態のことです。不正出血の主な原因は、産後のホルモンバランスの乱れと考えられています。
しかし、子宮復古不全などが原因で出血している可能性もあるため、出血量が増えた、悪臭がする、熱が出たなどの症状も同時に現れている場合は早めに医療機関を受診しましょう。
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産褥期は安静を心がけて体の回復を
出産を終えると、すぐに子宮が元の大きさに戻ろうと収縮し始めます。しかし、完全に元の大きさに戻るまでには6~8週間ほどかかり、この期間に無理をすると体の回復が遅れる恐れがあります。産褥期はできるだけ安静にして、体の回復に努めましょう。
また、出産から長期間経っても出血が治まらない、悪臭がするといった症状が現れている場合は、子宮に何らかの問題が起きている可能性があります。おかしいと感じたら、速やかに医療機関を受診しましょう。