褥婦とは?出産直後の過ごし方や注意点を解説
出産を終えた女性は褥婦(じょくふ)と呼ばれ、この時期の過ごし方で体の回復具合が変わってきます。しかし、産後のいつからいつまでが褥婦とされるのか、この期間にどのような過ごし方をすれば良いのかわからない方もいるでしょう。
そこで、褥婦と呼ばれる期間や期間中の過ごし方、褥婦の体に起こる可能性がある症状などについて解説します。
褥婦とは
「褥婦」という言葉を日常で目にする機会は少ないため、何を指しているのかわからない方も多いのではないでしょうか。そこで、まずは褥婦の概要から解説します。
分娩後から回復するまでの期間の女性のこと
褥婦とは、分娩直後から体が回復するまでの期間にある女性のことです。産後の体の回復具合には個人差があるため一概にはいえませんが、一般的には産後6~8週間くらいまでが褥婦の期間だとされています。
褥婦期間は「産褥期」と呼ばれる
褥婦として扱われる産後6~8週間くらいまでの期間は、「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれます。この期間中は出産によって受けたダメージを回復し、妊娠中に変化した体を元に戻すために、さまざまな症状が現れることがあります。そのため、できるだけ無理なく過ごすことが大切です。
褥婦の期間「産褥期」の過ごし方
産後の体の回復具合は、産褥期の過ごし方で変わってきます。どのように過ごすとよいのかについて、期間別に解説します。
産後〜2週間:安静に過ごす
出産直後から2週間くらいまでは、とにかく安静に過ごしましょう。出産は体に大きなダメージを与えるため、すぐに活動し始めると回復が遅れるおそれがあります。
赤ちゃんのお世話があるのでゆっくりと過ごすのは難しいかもしれませんが、赤ちゃんが寝ている間は自分も横になるなど、できるだけ体を休めることが大切です。
産後2〜4週間:簡単な家事ならOK
産後2~4週間ごろになると少し体が回復してくるため、簡単な家事程度なら動いても大丈夫です。とはいえ無理は禁物なので、疲れを感じたらすぐに休憩を取ってください。
外出はできるだけ控え、健診などでどうしても移動しなくてはならない場合はマイカーやタクシーなどを利用しましょう。
産後5〜8週間:徐々に元の生活へ
産後5〜8週間ごろになれば、出産直後と比べるとかなり体が回復しているはずです。体と相談しつつ、少しずつ元の生活に戻していきましょう。
ただし、体が回復したとはいっても、妊娠前の状態まで戻るにはまだまだ時間がかかります。いきなり妊娠前のように過ごすのではなく、短めの外出などから試してみましょう。
褥婦期間(産褥期)に体に起こること
産褥期には、体の回復のためにさまざまな症状が出ることがあります。いざというときに焦ることがないように、どのような症状が出る可能性があるのかを把握しておきましょう
子宮復古による痛み
妊娠すると、赤ちゃんの成長に応じて子宮が大きくなります。出産を終えると子宮が元の大きさに戻っていきますが(子宮復古)、子宮が収縮する際に痛みを感じることがあります。
悪露(おろ)
褥婦である時期は「悪露」と呼ばれる出血が続きます。これは出産時に剥がれた子宮内膜や傷からの分泌物、子宮内に残った胎盤などが排出されて起こるものです。悪露の量が多い間は産褥パッド、量が減ってきたら生理用ナプキンなどで対応します。
会陰切開・帝王切開の痛み
会陰切開や帝王切開などの外科的処置が行われた場合は、その傷の痛みも残ります。あまりに痛みが強い場合は、医師に相談してみましょう。
便秘
褥婦である時期は授乳や悪露が原因で体内の水分が減りやすいため、便秘になることがあります。こまめに水分を取ったり、食物繊維や乳酸菌を多く含む食品を摂取したりしましょう。
貧血
出産時の出血が多かったり、産後の食事がおろそかになったりしていると貧血を起こす場合があります。鉄分や葉酸などの、血液を作るのに役立つ栄養素を多く含む食品を積極的に食べましょう。
浮腫や腰痛
浮腫(むくみ)や腰痛に悩まされる方もいます。産後に体がむくむのは、体内のホルモンバランスや水分量が変化するためです。むくみが気になるときは、足を高く上げたりマッサージしたりしてみましょう。
また、腰痛は妊娠による筋力低下や、出産時に骨盤に負担がかかったことなどが原因で起こります。ある程度体が回復したらストレッチをしたり、骨盤ベルトを装着してみたりすると良いでしょう。
褥婦期間(産褥期)の注意点
ここまで解説したとおり、褥婦の期間中は体にさまざまな症状が現れます。そのため、できるだけ無理なく安静に過ごすことが大切です。また、それ以外にも褥婦の期間中に注意したいことがあります。
産褥熱や血圧の上昇
産後1~10日くらいの期間に、38℃以上の熱が出ることがあります。これは産褥熱と呼ばれるもので、子宮内に溜まった悪露が原因で感染症にかかったために起こることが多いといわれています。
産褥熱は抗菌薬の内服や点滴などで治療するのが一般的です。もし、退院後に高熱が出た場合は医療機関を受診しましょう。
また、 褥婦は血圧が上がりやすいため、血圧管理を行うことも大切です。授乳中でも使用できる降圧薬があるので、血圧が高い状態が続くときは医師に相談してみましょう。
産後うつやマタニティーブルーズ
褥婦の期間中に、マタニティーブルーズに悩まされる方もいます。マタニティーブルーズとは、イライラする、落ち込んでしまうなどの産後に現れる精神症状のことです。
産後の女性の3~5割はマタニティーブルーズを経験するといわれており、産後10日ほど経てば治まることが多いので、あまり不安に感じる必要はありません。
ただし、産後の精神症状が長引くと、そこから産後うつになってしまうおそれがあります。昔は出産から1ヶ月後の健診のみ行われていましたが、最近は産後うつの早期発見を目的に、出産から2週間後と1ヶ月後の2回健診が行われるようになっています。もし精神症状に悩んでいるようなら、健診の際に医師に相談してみましょう。
水仕事など負担のかかる家事
褥婦の期間中は、体に負担がかかる家事はしないようにしましょう。とくに水仕事は避けるのが賢明です。
産後の体は、筋肉量の低下やホルモンバランスの変化が原因で冷えやすい傾向にあります。その状態で冷たい水に長時間触れて体が冷えるとより血行が悪くなり、産後のダメージからの回復が遅れてしまいます。
無理なダイエットや運動
妊娠中の体重増加が気になって、早く妊娠前の状態に戻したいと思う方もいるでしょう。しかし、褥婦の期間中の無理なダイエットや激しい運動は禁物です。産後の体は出産によって消耗しています。また、母乳育児の場合は授乳でも体力を消耗します。
少なくとも1ヶ月健診が終わるまでは安静にし、医師に確認したうえでストレッチなどの軽い運動から始めましょう。また、過度な食事制限は避けて、バランスのよい食事を心がけることが大切です。
長距離や長時間の外出
長距離や長時間の外出も、産後の体に負担をかけます。病院に行くなどのやむを得ない場合を除き、長く外出するのは避けましょう。1ヶ月健診を終えて体調に問題がなければ、近所を散歩するなど短時間の外出から試してみるのがおすすめです。
飲酒・喫煙・カフェインの摂りすぎ
飲酒・喫煙やカフェインの摂りすぎにも注意が必要です。母乳育児の場合、ニコチンやアルコール、カフェインが母乳を通して赤ちゃんの体に吸収されてしまいます。すると、これらの物質の興奮作用によって赤ちゃんの寝つきが悪くなったり、赤ちゃんの成長を妨げたりするおそれがあるのです。
とくに喫煙は赤ちゃんが呼吸器疾患を発症したり、乳幼児突然死症候群が起こったりするリスクを高めるといわれているため注意が必要です。
褥婦期間は安静を心がけて自分のペースで!
褥婦とは、出産のダメージから回復するための重要な期間である「産褥期」の女性のことです。褥婦の期間中に無理をすると回復が遅れるため、できる限り安静に過ごしましょう。
一般的に褥婦の期間は産後6~8週間くらいまでとされていますが、回復具合には個人差があります。無理に家事や運動などをせず、自分のペースで進めましょう。